命のかけら La Vita Frammentaria Micia様作
闇が呼んでいる。闇の中から私を呼ぶ声が聞こえる。
永遠に吸い込まれてしまいそうな・・・闇。私にまとわりつく闇の声。
聞いてはいけない!もう一人の私が叫ぶ。
あれは・・・死の呼び声。
そう、忘れていた。私の胸に巣喰う悪魔の存在を・・・。
忘れていられたのは、ほんの束の間の幸せにすぎなかったのだ。
私は何度も血を吐いた。激しい咳とともに。
ルイ・ジョゼフ殿下と同じ・・・同じ悪魔が私に取り憑いたのだ。
殿下の背骨をひとつひとつ壊し、全身を冒していった悪魔。この病に効く薬はない。
病巣が肺の中で固着するか否か・・・それで生死が決められる。私の胸に食らいつき、
そして、眠っていた悪魔よ。いま再び目覚めようというのか・・・?
神よ・・・!私の命を、この瞬間にも召されることをお望みですか?
私の命など、悪魔にくれてやりましょう。
それが、私への罰なのでしょうから・・・性を偽ることを運命づけられた私への。
煉獄へでも・・・地獄へでも・・・どこへでも参ります。
だから・・・
だから、あと少し・・・
もう少しだけ、私を生きさせて・・・欲しいのです。
私の中の小さな命が、ひとりで生きられるまで。
神よ・・・!どうか・・・
死を畏れている・・・?私が、死ぬことを怖れている?
軍神マルスの子として、この身を砲弾に捧げることを誓い・・・
パリで、あの戦場で指揮をとった、この私が・・・?
生き残る可能性など、あるはずもなかった・・・。私は、自ら戦闘の場に赴き、
愛する人を死なせてしまったのだから・・・。
あの日・・・私には、この世で生きようという意志のかけらもなかった。
バスティーユを陥落させること・・・ただそれだけが、私を動かしていた。
私は、軍神マルスに見捨てられ・・・そして、ふたたび目覚めた。
生への執着がこれほど強いものだったとは・・・知らなかった。
こんなにも・・・生きていたいと願う刻が来ようとは・・・
神よ・・・!
すべての生きとし生けるものの生命の営みを、つかさどり給う神よ・・・。
母になるということは、新しい命に責任を持つことなのだから・・・。
神よ・・・!どうか・・・