梅が香 

 

 何処かから、金色の光が差し込んできてる。
 あれ・・・・・・。
 オレの髪を撫でるあいつの手の感触が何時の間にか消えてた。まどろみながらも、優しい指先を確かに感じてたはずなのに。
 佐為、起きたんだ。         今日も冬晴れかな・・・・? 
 夜は締め切っている塗篭(ぬりごめ)の中が薄明るいので、光は一人になった御帳台の中でぼんやりとそう思った。
 いつもは朝起きて振り向くとすぐ隣にあいつが寝ている。というのは、光はいつも決まって佐為に背を向けて寝入り、朝起きる時も同じ様に彼に背を向けているからだ。寝相の悪い自分が、夜中に寝返りを打たないはずは無いと光は思うが、何故か決まって朝は元通り佐為に背を向けて丸まっている。怪我をして右腕を下に出来ないという緊張感がそうさせるのか、あるいは、自分の寝相の悪さはもう治ったのか。
 光はうつ伏せながら、居るはずの人が抜けて空になった褥に手をやった。
 まだ温もりがある・・・・。先に起きるなんて、珍しい・・・な。
 そうだ、さっきも。だってオレの髪撫でてた・・・・。あいつ、起きてたんだ。
 もう佐為のべたべたした愛情表現にはとうに慣れっこになってるけれど、そんな様子を誰か・・・・たとえば、そうだ、和谷なんかが見たら・・・。あいつ、何て言うだろう? 
 こんなこと、      そう同じ御帳にかの青年と寄り添うように横になって、しかも寝入りしなや、起きしなに、さっきのように彼からの優しい愛撫を受けたりする     なんてことを、もし人に知られたら・・・・・。決して人には言えない。さすがにそう思う。
 ここは完全に自分と佐為だけの空間だから・・・。きっと、他の誰の目にだって奇異に映るに違いない。
 そう思いながらも光はまだ重い瞼に負け、愛しい人の温もりの残る褥に少しずれて鼻と頬を摺り寄せた。そして、芳しい残り香に埋まると、彼の被っていた衣をぎゅっと握りしめて褥に接吻した。
 
 

「なぁ、佐為ぃ。このやけに豪華な櫃は何?」
 光はその朝やっと起きると、母屋の端に置かれている櫃に気付いた。昨日の晩は確かに無かった。このせいでもしかして、あいつ女房か舎人に起こされたんだろうか?
「・・・・・・・」
 佐為は答えない。
「ねぇってば」
「・・・・・・・」
 それでも彼は答えない。
「なぁ、聞こえてんだろ?これナニさ?」
「うるさいですね、光は。もお!」
「う、うるさいとは何だよ! オレがシカトすると、お前だってしつこく話し掛けてくるくせに! 無視されると余計気になるんだよな」
 光はそう言うと、これみよがしに頬を膨らました。しかし、それでも期待した答えは返って来ない。
「別に、何だって良いでしょう」
 佐為はそう返しただけだった。普段の彼だったら、光がむくれれば、慌ててなだめに掛かるはずなのに。
「何だっていいんなら、教えろよ」
 だけど光が食い下がったので、しまいには佐為も答えた。
「もう・・・、仕方ない人ですね。・・・・・・それは、帝が贈ってこられたのです」
「またぁ?こないだも来たじゃん。お見舞いとか言ってなんか、色とりどりの錦がさ」
「ええ、まぁ」
「で、今度は何なわけ?」
「さぁ・・・・」
「じゃ、何が来たのか開けてみようよ、佐為?」
 すると、佐為ははた目にもはっきり分かるくらい大きく溜め息をついて言った。
「そう・・・ですね。開けて・・・・みましょうか」
 二人はがさがさと櫃を開けて中を探った。すると、漆塗りに螺鈿が施され、七宝がはめこまれた碁盤が現れた。意外な贈り物に、佐為は思わず息を呑んだ。
「うっわー!!すげーーっ。なんだ、こりゃ! こんな煌びやかな碁盤初めて見たぜ。それに、見ろよ。碁笥もあるよ、佐為。ほら」
 そう言って、光は目を見開き、櫃の中から碁笥を二つ手に取った。
「光、腕、大丈夫?無理しちゃダメですよ」
「大丈夫だって、このくらいならな、ほらっ」
「光、貸しなさい。碁笥は重い。私が出すから」
 佐為は光の手から、碁笥を取り上げ、床に置いた。
 光の右腕は明の方術の甲斐もあって、無事に回復に進んでいた。今ではもう軽いものなら右手でも掴むことが出来るようになったのだ。
「へ〜っ、すげぇな。この碁石。なんか違うよ。綺麗だな?」
「光、この白石は象牙を削って作った碁石です。形が整っているでしょう? なんという高級なものを・・・・。よく艶と感触を覚えなさい」
「うわ〜」
「光、見てご覧。この碁盤。実に見事な細工が施されている。これは多分、海の向こうの大陸に伝わる故事が螺鈿と七宝の細工で描かれているのではないかと思います」
「故事?」
「そう、古の時代の堯帝という王がその子丹朱という者に囲碁を創り出して教えたという話が大陸の史書には記されています。この絵はその話なのではないかと・・・・・」
「ふーん。初めに囲碁を創ったやつなんて居たのか?」
「伝説のような話なので真偽の程はわかりませんけどね。
 それにしても、こんなに宝玉がはめ込まれているのに、決して悪趣味な印象になっていない。煌びやかな中にも硬質な品がある。それに大陸の故事が描かれているらしいのは、渡来の品かもしれませんね。このような品を選ばれるとは、帝は実に趣味の良いお方だ・・・・・」
「ふーーーん。趣味いいんだ・・・・・。なんだかオレには高価そうってことしかわかんないけど。気にいったんなら、良かったじゃん、佐為」
「・・・・・・・・・」
 佐為は黙っていた。
「なんだよ?浮かない顔して。こんなすげーもの貰ったのにさ」
「・・・・・」
 聞いているのか、聞いていないのか、佐為は、沈んだ顔をしてやはり黙ったまま碁盤を眺めていた。
 そう言えば・・・・。こないだの錦の時もそうだった。あの時もちっとも嬉しそうじゃなくて・・・。さっきと同じように思いっきり溜息ついてたような気がする。
「それにしてもお前相当帝に気に入られてんのな。最近、よくこんなの届くじゃん」
「・・・・・、まぁ・・・ね」
「あ、そうそう、そう言えばさ。歌合わせの時もさぁ、お前のよくわかんねぇう・・・・あっ。・・・・・・」
 光は途中まで言ってはっとして口をつぐんだ。
・・・・・『お前のよくわかんねぇ歌が、帝のえこひいきで撰ばれたよなぁ』・・・・・・・、なんて言うところだった。
 当然だが、もう遅かった。
「光は、しょうがない子ですね」
「あ、あの・・・」
「いいですよ。どうせ、皆からそ言われてるのでしょう。でもその光のうっかり失言のくせはいい加減直さないとね。私には良くても、他の人には気を付けなさい。そういううっかりで、一番困ることになるのはあなた自身なのだから」
「う、うん。・・・・・・。ご免、佐為」
「気にしなくていい。それより、これでさっそく打ってみますか?光」
「待ってよ!まだある。これは?あ、文じゃん」
「あ、それは貸しなさい、光!!」
 佐為はとっさに叫んで光の手から、上質な和紙の封書を奪い取った。文には紅梅のつぼみをつけた小枝が添えられている。
「な、なんでぃっ。いくらオレでも勝手に中見たりしねぇのに、なんだよ。そのけんまくは」
「・・・・。す・・みません。ごめん、光。つい。・・・・・・・・もう、いいから。さ、これで一局打ちましょう、光」
「なんだよ、見ねぇの? 帝からの文なんだろ?」
「いいんです。後で見ますから。さぁ、光」
「ん」
 佐為は文をオレの前では開かずに狩衣の懐にしまってしまった。
 その時、オレはなんとも思わなかった。確かに佐為がオレから文を奪い取った時の、あの一瞬見せた表情はなんかやけに怖いと思ったけれど・・・・。別に気にとめなかったんだ。
 だって佐為がすぐ文を読まずにそのままにしておくのはいつものことだったから・・・・。ただ、オレは帝の文にもあの、積んでおくだけの女房たちからの文と同じじゃまずいだろう・・・そうは少し思ったのだった。
「それにしてもさぁ、今回はこれなんの贈り物なわけ?こないだの錦は夜襲に遭った「お見舞い」だろ。これはさしずめ年賀ってとこ?」
「・・・・さぁ」
「なんだよ!お前心ここにあらずだな。もー!」
「・・・・・」
 いつもは軽口を叩き返してくるはずの佐為が、しかし、やはり今日は黙って俯いていた。
「佐為・・・? どう・・・・した。何か心配事でもあんのか?」
「い、いえ。すみません。別に・・・・何でも無いのです」
 ・・・・・ちぇっ。
 まただぜ。急に暗くなるんだよな。で、そういうとき、決まってオレにはナニも話さないんだ。
 いつも・・・・そうだ。オレじゃ・・・・・・しょうがないような事なんだろか、佐為。
 お前のそういう顔、ヤなんだよ、佐為。
 なんか胸が詰まるんだ。
 どうしてだろ?、佐為。
 帝からの贈り物をお前があまり喜ばないのはなんでなんだろう。
 菅原様の妬みや恨みが募るから・・・?なんだろうか。
 無理もない。あんな怖い目に遭ったんだもんな。
 どうしたら、お前笑うかな?
 そりゃやっぱ碁打つしかないよな。
 お前の一番好きなことだもんな。
 そうだ! 光は少しひらめいたような気がした。
「なぁ、佐為。今日はさ、オレに詰め碁の問題出してよ」
「詰め碁・・・ね。今の光がどれだけ解けるかテストしてみるのも面白い。やってみましょう」
 光の提案に佐為は思った通り乗ってきたようだった。
「難しいの出せよ。佐為」
「言いましたね!」
 へへ、思った通りだ。こいつオレの挑発にすぐノッテくんだよな。ほんと分かりやすいヤツだぜ。
「そ!、うーーーーんと難しいやつ。オレを甘くみんなよな、佐為」
「そんなこと言って泣いたって遅いですよ。じゃ、これでどうです?」
 佐為はほんの数口しゃべる間にも、黒石と白石数十個をあっという間に盤上に並べて、黒の死活がかかった形を作ってしまった。光の挑発に応え、彼はいきなり上級者向けな複雑な形を作ったのだ。並べ終えた佐為は扇を口元に当てて、楽しそうに微笑んでいる。
 ああ、良かった。いつもの佐為だ。
「光、私の顔ばかり見てないで早く問題を解きなさい!ほら。それとも、あんなに豪語した割にいきなり難しくて解けませんか?」
「何言う、てめぇ! このくらい分かるさ」
 と答えたが、光は少しの間、考えなければならなかった。
「アレ・・、光。分かるのでしょう? 早く石を置きなさい」
「・・・・・」
 光は少し佐為を睨み返すと、また少し盤を見てから黒石を持った。光はもう自分で石を持てるようになっていた。
「ここだ」
 光は一手目を置くと、次の白石を置き、続く黒をまた置いて、そして・・・・、光が七手先まで置くと黒は活きた。
 佐為はやはり凄い。光はそう思った。口ではああ言っているが、むやみにオレを負かそうとするような問題は決して出さない。むしろ、オレにぎりぎり考えさせて、持てる力量を最大限に応用させ、そしてそれを引き出すのに実に穿ったレベルの出題をしてくる。光ははっきりそう感じた。それも昔は気付かなかった。でも最近すごくよくわかるんだ。佐為は頭の中で常に物凄い速さで計算している。どうして、こんな上手い教え方が出来るのだろう。やっぱり天才ってこういうことを言うんだろうか・・・・。
「ふふふ。はい、よく出来ました。でも、威張った割にはちょっと時間が掛かったようですけど・・・・」
「一言多いんだよ、佐為は。『よく出来ました』だけでいいだろ?」
「じゃあね、次はっと」
 佐為は凄く楽しそうで、嬉々としていた。
 ああ、良かった、佐為。
 オレ、お前のそういう顔が好きなんだ。
 オレに話したくないことなら無理に聞いたりしないよ、もう。
 だから、オレはこうしてお前を笑わすんだ。
 だって、オレたち、こうして碁盤を挟んで座ってる時ってなんか最高に楽しいもん。
 なっ、そうだろ?佐為。

 光は不思議な子だ。この子なりに私に気を遣っていることくらい分かる。それもまるで魚が水の中を泳いでいるみたいに自然にやってのける。
 こうした勘はとても良い。そのほかのことでは抜け落ちたように注意力は散漫だし、万事に思慮も足りない。何より人の気持ちに鈍感なところがある。
 そのくせに、こうして私に気分転換させたり、碁での勘が不思議なくらい良いのは何故なのだろう。

 こうして、たっぷり一刻の間、詰め碁をやり続けると、遂に光は「参りました」と言って、床に体を大の字に投げ出した。
 佐為は、そんな光を母屋に残し、一人寒空の庭に下りていった。そして先ほど懐中に仕舞いこんだ文を手に取り広げた。添えられていた紅梅の小枝がはらりと地面に落ちた。

 恋しきは 石持つ君が 袖なれや 梅薫り初む 宮へましませ

『私が恋しく想うのは、石を持ち碁を教えてくださるあなたの姿なのだろうか。梅の花が薫り始めた御所に(碁を教えに)どうかお越しになってください。』

 帝が碁を・・・・・? 
 帝が今までこんな歌を詠まれたことがおありになっただろうか?一体どういうご心境の変化だ。
しかし、私に「ましませ」などと・・・・。このように過分なお言葉遣いをされるのは、やはり私自身を請われておいでなのだろうか・・・・。どのように・・・・、一体どのように受け止めればいいのだ。
 半分は予想していた内容であり、半分は意外な内容でもあった。佐為は戸惑いを隠せなかった。
「佐為ぃ?庭でナニしてんだよ。寒いだろ」
「い、今戻りますよ」
 佐為は慌てて文を畳んでまた懐中に入れると、寝殿の中に戻っていった。

 梅が香に 御志も 薫りけり めでたき宮に 疾く参らばや

『梅の香りに大君のお志もまた薫るようでございます。(梅の花もお志も)共に慶ばしい宮中に急いで参内したいものです。』
 佐為は後で光の目を盗んでそうしたため、彼の寂れた庭にも一対だけある紅梅と白梅の、白梅の方の小枝を手折り、歌に添えると、使いを宮中に遣ったのだった。

 ああは書き送ったが、果たして帝が本当に碁を学ばれたいなどとお思いになるものだろうか。私は、にわかには信じ難い。
 碁盤の贈り物も、そして歌も、私の気を惹く為だけの方便かもしれない。もし・・・・、そうだとしても、いや、たとえ、ご本心からそのように思われたとしても・・・・。
 いつまで逃げていればいい。・・・・いつまで。
 こんなことに煩わされたくなど無いのだ。私にはもっとやらなければならない事があるのだから・・・・・。


 次の日、佐為は憂鬱な気持ちを抱えたまま、病で静養中の行洋の許を訪れた。
「行洋様、ご病気が重いなんてな。去年の春はあんなにお元気だったのに」
 行洋への取次ぎで待たされてる間に、光が佐為に話し掛けた。
「そうですね・・・」
「ご病状はどうなの? よくなんないのかな? 賀茂もついてんだろ。あいつが居れば、どんな病も治しちゃいそうなのにな」
「ボクが・・・何だって?」
 御簾の奥から、聞き慣れた声がした。取次ぎの女房の替わりに戻ってきたのは賀茂明だったのだ。
「賀茂ぉ!お前来てたんだ」
「佐為どの、どうぞ奥へ。行洋殿がお待ちです」
「光、すまないが、少し外しててくださいね」
「ああ、分かった。じゃ、オレはここで待ってるよ」
 光は廂に明と共に留まった。
「大分腕は良くなったらしいな」
 明が訊ねた。
「ああ、お前のおかげだよ。いろいろありがとな、賀茂」
「いや、そんなことはいいんだ。キミの役に立てたなら良かったよ」
「それよりさ、お前よくここ来てるんだ?」
「ああ、行洋殿が倒れられてからは頻繁に来てる。胸の発作を時々起こされるんだ。その度にね」
「そうか、行洋様、心配だな。良くなられるといいな」
「うん・・・」
「お前も忙しくて大変だろ。陰陽師の務めはあるし、その他にもオレの腕看てくれたり、行洋様看てたりさ」
「まあね。ボクを必要としてくれる人が居るなら、そこへ行くだけだよ」
「ふーん。偉いなぁ、お前は」
 明の瞳の光はにわかに揺れて、彼は少し照れたように眉根を寄せて言った。
「別に偉くなんか無いよ。慈悲心からだけで動いてる訳じゃないんだ。ボク自身がそうしていないといられないんだ」
「へぇ・・・・。よくわかんねーけど、それでもお前偉いよ。オレなんか馬鹿で単純だから、お前みたいにいろいろ気が回んないしさ」
「ボクは逆にキミが羨ましいよ。誰とでもすぐ打ち溶けるその大雑把な性格がね」
「なんだよ!大雑把だとー。褒めてやったのに」
「ボクだって褒めたじゃないか!」
「なんだよ!」
「くっく。はははは」
 明は明るく笑った。この少年のこんな素直な笑顔を見るのは初めてのような気が光にはした。
「お前、いつもむっつりしてるかと思ったら、意外と可愛い顔すんのな。はは」
 光もつられて笑った。
「か、かわ・・・!?」
 明は今度は顔を紅くした。その表情は怒りだしている。
「でも、佐為と同じでさぁ、お前一言余計なんだよな。それに、オレ、誰とでも打ち解けてなんかいねーぞ。菅原様とだけはオレ、天地がひっくり返っても仲良くなんかなれねーよ、悪いけど」
「そりゃ、そうだろう。当たり前じゃないか」
 明は落ち着きを取り戻した。
「オレの傷はこうして良くなったけどさ。あの陰険野郎がのさばってる限り、心配ごとが絶えねーよ。昨日だって、帝からまたすげー贈り物が届いてさ。でもあいつ、ぜんっぜん、嬉しそうじゃなくて、それどころか憂鬱そうでさ。菅原様に疎まれるのが辛いんだ、きっと」
「帝から贈り物が?」
「ああ」
 明はしばらく考えてから尋ねた。
「それ・・・・・、初めてじゃないだろ?」
「え、うん。よく来るよ、佐為んとこ。四季折々、そりゃいろんな品がさ」
「ふーん・・・・」
 明は口に掌を当てて、何かを探るように視線を彷徨わせた。
「何・・・だよ?」
「・・・・いや」
「あいつ、碁強いし。帝にも気に入られてるし、菅原様は羨ましくて仕方ないんだろうな」
「・・・・」
 明は、黙って何か言いよどんでいるような表情で光を見た。
「なんだよ?」
「・・・・・キミは・・・・、おめでたい奴だな」
「はぁ??」
 光はただきょとんした顔で明を眺めていた。


  つづく

<後書き>
 作中挿入した和歌については、ゆーべるさんにとてもご丁寧なご教示を賜りました。特に、帝の歌は私の作った原型の歌を平安調の雅な味わいのものに見事にアレンジしてくださいました。さすが古文の先生・・・。もう感動です。心よりお礼申し上げます。大変ありがとうございました(^^)。
                         ままか  

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